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自由研究って、いろいろあって。だいたいが『あぶりだし』、『アリの研究』、『漢字の成り立ち』とかつまらないものばっかりなのですが、僕はもっぱら工作が主で何のための休みかわからないくらい、夏休みは工作に明け暮れてます。
「お父さん、ノコギリと木材を買ってください。」
「何に使うんだ。」
「これを作るの。」
そういって一枚の構想図を渡した。ぺらぺらのチラシの裏に書かれた僕のイメージ。僕の構想ではウシとウマが立体の木材で作られていてそれが知恵の輪的なパズルになっていて、くっつけると人の形になるという素晴らしいアイデアだった。
中華そばをちゅるり。そしてお父さんが喋った。
「こんなにショボい物を作る気なのか。」
言うに事欠いてショボいときたもんだ。僕の中のモンスターがむき出しの怒りを込めてこう言っている。
『言うに事欠いてショボいとは何だ!』
「お父さん。だったらどんな物を作ればいいんですか?」
ザルに残りわずかとなった中華麺をかき集めながら父は言った。
「用はパズルを作りたいんだろ?」
「違います。知恵の輪です。書斎の机に置いていそうな知恵の輪を僕は作りたいんだ。」
「立体のか。」
「そうです。立体です。」
「わかった。」
そうして僕を引き連れて、2階の物置に僕を連れて行った。
(つづく)
家の目の前には40と書かれた標識が立ってあって、暇な時にはそこによじ登りくつろいでいた。
素足だと登りづらいので足の裏を舐めてから登るんだけど、どうやらその舐める様子が足の裏の匂いを嗅いでいるように見えるらしい。しかもその後、ポールに登って幸せそうな顔をするものだからみんなオカシナ者を見るような目で僕を見るんだ。そんな目で見るんじゃない!
最近好きなのは、にんじん。
一本丸ごと皮を剥いて、ばりばりと食べる。味付けは夏の太陽と隣のおねえさんのおっぱいだ。
山を切り開いた高台にそれはあって、僕の学校で毎日歩いて登校しています。家から歩いて10分。行くときは10分。帰るときは110分です。
山道は、石畳が敷かれてあって僕たちの遊び場。一番やっている遊びは、ジャンケンで買ったら階段を進むあれ。
グーは、グリコ。
チョキは、チョコレート。
パーは、パラシュート。
これはよく考えられてあって、グリコは進む数が少ないから皆出したがらないんだけど、実は勝てる確立がとても高いんだ。(チョキとパーだとチョキを出すからね)
だいたいみんなチョキを最初に出すから、ちょっと慣れた人だとグーを最初に出す。さらに慣れるとパーを出すようになる。さらに慣れるとチョキを出すようになる。さらに慣れるとグーを。
そんな心理戦をするわけだけど、大抵チョキのチョコレートを『チョ』で1マスにするか『ョ』で1マスにするかでケンカして、最後は鬼ごっこになるんだ。
帰る途中にやるもんだから、いずれ皆バラバラになって鬼ごっこも最終的に誰が鬼のままで終わっているかわからなくなってちゃんとやったことがないけれども、みんな元気に遊んでます。
100円でこれだけのお菓子を買えるなんて、なんて素晴らしいお店なんだろう。駄菓子屋『ふじわら』の店先でふがしを頬張りながら僕は思った。僕はふがしが好きだからふがしを3つ買って残りの40円でジュースを買うのが駄菓子屋でのいつものお買い物なんだけど、ここ最近10円くじが楽しいもんだからついついジュースを買うお金を使っちゃう。それは他の人もいっしょで、いつもヨーグルトを買う僕の友人なんかは、10円くじをやったもんだからヨーグルトが買えずに迷った挙句、残りのお金をすべて10円くじに使っちゃっていた。
「また、スーパーボールか。」
10円くじのはずれのスーパーボールを地面に叩きつけながら僕はふがしを頬張った。もふもふと食べられるふがしだけれども、とても喉が渇く。公園の水飲み場に行くと、やっぱり高学年の人たちが水飲み場で遊んでいた。丸い形をした水飲み台は、取り合いになるぐらい格好の遊び場なんだ。
ああ、喉が渇いたなぁ。僕は水が飲みたい。
蛇口を最大に捻っているもんだから、水は勢いよく5メートル50センチの高さまで飛び出していた。あんなんじゃ勢いが強すぎてかえって飲みづらいよ。
「なんだおまえ!」
蛇口を捻って水の勢いを弱めたら怒られた。だってこれじゃあ水が飲めないじゃないか。だから弱めたんだ。お前こそなんだ!なんてことを心では思うけど、高学年の人の迫力は凄まじくて、僕の半ズボンもきゅっと小さくなるくらい声が出なかった。
しばしのにらみ合い。僕は、次にどんなことを言われるのだろうと見つめていただけなんだけど、自然とにらみ合う形になってしまっていた。偶然って恐ろしい。
「ちびぃ。いい度胸してんじゃねぇかよー。」
その『チビ』を『ちびぃ』って言ったことが面白くて思わず吹いてしまった。あー、喉渇いた。
「てめー!」
一瞬目の前が真っ赤になった。
痛い!
殴られたんだ。
そのまま3人がかりでぼこぼこにされて唇から血が出た。痛いよお。
「今度あったら只じゃおかねえからな!」
そんなこと言われたことなかったもんだから、涙が出てきて喉が渇いた。えぐえぐ泣いて、もそもそやっていると10円くじのスーパーボールを見つけられて取られてしまった。
「それは僕んだぞ!」
掴み掛かったけど、軽くいなされて、そのまま吹っ飛ばされた。
痛いよぉ。痛いよぉ。
一人になっても泣き続け、陽が暮れる頃、喉が渇いていたことを思い出して水を飲んだらとてもおいしかった。
沼からはほんのりと湯気が立ち込めていて、まるで黒いスープを沢山の海藻類で煮込んでいるようだった。
「おとうさーん、いっぱいいるよー。」
息子が握りっぱなしの水網は、すっかり息子の汗でしんなりと水気を帯びていて、その様子が懐かしくもあった。沼の表面には藻が張り、絶好の蛙の卵採り日和なんだ。
「ほんとだ。たくさんいるね。バケツいっぱいに汲んでいこう。」
歳の息子と同じ気持ちになり、口調も自然と幼くなってしまう。
蛙の卵をバケツ一杯に汲み上げるなんてことは、意味もないけれども、あの頃は、そんな無意味な日常が最高の楽しみで兄貴のアイスクリームを盗んで食べるのとプールと鶏の唐揚げ、そして花火大会とりんご飴のことしかなかった夏。
沼に水網を突っ込んで引き寄せた。あいかわらず蛙の卵は気持ちが悪い。
「すげー、いっぱいだ。たべられるかな?」
息子と汲み上げた蛙の卵をしばし眺め、息子の台詞のどこか可笑しげなところに顔から笑みがでる。ちょっと癖のある髪の毛をワシワシと撫で上げてあげると息子は悲鳴を上げ、喜び走り回った。だしぬけに生えている木の根っこに足をとられ、不器用にすっ転んだ。すっくと立ち上がった我が息子は、唇を噛み締めて僕のことを睨んだ。いや、別に睨んでいるんじゃない。泣くのを我慢しているだけなんだ。しょうがないもの、男の子なんだから。さぁ、泣かないで。
「大丈夫?」
こくんと頭でっかちがお辞儀をした。
「さぁ、もう帰ろう。」
優しい言葉をかけるたびに溢れる涙。
「いつまでも泣いているんじゃないの。とにかく帰ろう。今日の晩御飯は鶏の唐揚げなんだぜ?」
森は暗さを深めていた。